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この調査結果は、日本の国際協力事業団(JICA)が地元ムラワルマン大学と共同で行った「熱帯降雨林と人とのかかわり」(1979〜81年)の研究の一環として、東カリマンタンのセブル地区で実施した調査で、残存木2ニ本中70本が何らかの損傷を受けていたこととも一致する。 さらに、伐採のために縦横につくられた林道が、それまで人間を寄せつけなかった熱帯林に道を開き、農民が林内に入り込むことも明らかになった。
その過程は、まず、択伐のためにブルドーザーで道をつけると、それを伝って地元の業者が入ってきて、その他の有用材をことごとく伐採してしまう。 そしてその後には、入植者が繰り込んできたのだ。
焼き畑は熱帯林破壊の最大の原因とされるが、伐採の行われなかった森林ではほとんど焼き畑は見られなかった。 山火事後に行われた、西ドイツやインドネシアの熱帯林を保護する国際的な活動グループ「SKEPHI」の調査によって、山火事の直接的な原因がかなりはっきりしてきた。
熱帯林の内部は湿度が高く、周りが火に包まれても延焼することはまずない。 これは、人間の手の入っていない熱帯林で焼き畑をするときに、事前に伐採して倒木を乾燥させておいた地域には火がついても、自然のよく守られた周辺の原生林には火が広がらないことでも分かる。
延焼地には、世界でももっとも貴重な熱帯林に数えられるクタイ森林保護区の12万ヘクタールも含まれているが、周囲の伐採地は丸焼けになったのに、保護区の中でも自然が完全に残された3分の2の地域だけは浮島のように残った。 だが、燃えた地域の60パーセントは伐採地だった。
長年の伐採で熱帯林はスカスカになり、伐採跡地に生えてくる低木や草は乾期に枯れて火がつきやすく、2次林もまばらで幹も細く燃えやすかった。 さらに、伐採の現場のあちこちには、丸太にするために切り払った枝やつるなどが積み上げてあった。
これも乾き切って薪の山と化していた。 そこに、焼き畑のシーズンがやってきた。
しかし、先住民のダャク族は、長い伝統を持った焼き畑民で、延焼させない厳しい徒や高度の技術を持っているので、彼らが原因をつくったとは考え難い。 一方、後述するように、この一帯には他の島から送り込まれてきた移住民が入り込んで、何百カ所かで焼き畑を行っていた。

その火が広がった、とみるのがもっとも自然のようだ。 しかし、直接熱帯林への集団移住山火事の一帯で人口が急増した理由は、インドネシアが国を挙げて進めている集団移住政策「トランスミグラシ」にある。
大小一万3000の島からなるインドネシアは、一億7800万人(89年)の人口の3分の1が、ジャワ、バリなど4つの島に集中している。 とくに過密なジャワ島は、収容限度が7000万人といわれているのに、人口が一億人を超え、農民の40パーセントは土地がなく、35パーセントは家族を養うのに十分な農地がない。
バリ島に至っては、農家一戸当たりの農地は0・1ヘクタールしかない。 一方でこれら4島以外の島々は、面積がその13倍もあるのに、全人口を合わせても5000万人ほどであり、人口希薄で熱帯林の宝庫である。
この過密人口を過疎の島に移住させる計画が、スハルト大統領によって1969年に開始された第一次開発5カ年計画以降本格化した。 カリマンタン以外にスマトラ、スラウェシ、イリアンジャヤの4島に一150の移住地が指定され、50万世帯の移住をめざした。
これが、84年スタートした第4次計画では、800カ所、75万世帯に膨張した。 87年春までに850万人の移住が終わったと、インドネシア政府は公表している。
最近では世的な原因は焼き畑であっても、それがこれだけ燃え広がるほどに森林を傷めつけていたのは長年の伐採であり、それに加担してきた日本の責任は免れるわけにはいかない。 世界に例を見ないほどの民族大移動だ。
この移動人口の60パーセントは土地のない農民、10パーセントは都市のスラム住民だ。 残りは、大規模なダム建設に伴う水没や鉱山開発などで強制的に立ち退かされた「開発難民」などとなっている。
山火事のあった東カリマンタンでは、今世紀末までに17万3000世帯、約86万人が移住する計画で、全面積の4分の一に相当する510万ヘクタールが開拓予定地とされている。 一世帯5ヘクタールの土地に40平方メートルほどの家、最初の1年間の食糧、生活必需品、クワなどが提供される。

すでに、11万世帯ほどが入植しており、サマリンダ付近にも入植地ができている。 以前はどこでも焼き畑ができたが、政府が規制を強めてからは、村長に許可を願い出て、さらに村長は郡長の許可を求める建前になっている。
農家一戸が一回に認められる焼き畑は11ヘクタール。 焼き畑林地内の樹木を伐採して、乾期の間、放置して乾燥させておき、雨期の直前に火を放って焼き払う。
そのあとに、陸稲、大豆、バナナ、コーヒーなどの作物を植える。 だが、これも2〜3年目には雑草や害虫が発生する。
通常は3〜4年耕作すると、土地の養分もなくなって放棄せざるを先住民の焼き畑は、次に火を入れるまでには20年以上も間隔を空けるので、十分に森林が回復してくる余裕があった。 だが、手っ取り早く現金を稼ぐために、焼き払ってコショウ、ココヤシなどを植える入植者は、数年間も休ませずに同じ森林に火をつける。
山火事は、6月に落雷とともに始まった。 これが消えないままに、7月に入るとさらに落雷が追い討ちをかけ、7カ所で同時に火の手が上がった。
さらに火勢は強くなり、「暗黒の土曜」と関係者が呼ぶ8月10日には、同公園内で起きたその前の10年間の山火事をすべて合わせたよりも広い森林が、たった24時間で燃えてしまった。 火勢は衰えず、9000人の消防隊員を投入したが手に負えなかった。
高温の巻き起こした激しい上昇気流で、火のついた枝や葉が遠くにまで運ばれ新たな火を広げていった。 煙や灰が空を覆って日中でも暗くなり、ライトをつけなければ車も走れないほどだった。

地元紙は「核の冬の襲来」と書いたほどだった。 人工衛星ランドサットが高度700キロから送ってきた写真を見ると、東西500キロもあるワイオミング州を横断して煙がたなびいている。
結局、火事は8月の下旬まで燃え続け、日によっては十数キロも燃え広がった。 9月半ばになって煙が消えてやっと空からの調査が可能になった。
焼失面積は56万ヘクタール、愛媛県ほどの森林がほぼ丸焼けになった。 このうち、3分の2は国立公園内だった。
しかし、動物への影響は少なく、死体で発見されたのは111万頭のヘラジカのうちの350頭、1500頭のバイソンの中の9頭だけだった。 イエローストン国立公園は1872年に指定された世界最古の国立公園として知られる。
公園内の一切の自然のものや景観を本来の姿に維持することが法的にも定められ、山火事もこの目標に反森林は一定不変のものではなく、ある法則性をもって常に変化している。 これを植物生態学ではサクセッション「遷移」と呼んでいる。
イエローストンを考えてみると、山火事などで、大面積の森林が破壊されると、まず草が戻り、次いでマツの一種が生えてきて、100年かかつて、高さ十数メートルの密生した森林を形成する。


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